2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定に向け、現在は前回(2016年度)の改定の検証結果も含めて個別項目について集中的に議論がなされている。
次回は医療機関の連携をする、いわゆる地域包括ケアシステムの構築に向け各々大きく報酬が改定されることが予想されている。
次回の報酬改定について議論する前に、まずは前回の改定での主要な論点、考え方をまとめておきたい。

2016年度調剤報酬改定で掲げた
「患者のための薬局ビジョン」

2016年度調剤報酬改定では、2025年に団塊の世代が75歳以上になることを踏まえ、制度の持続可能性を確保しつつも、国民皆保健を堅持し、より安全・安心で質の高い医療を受けられるようにするという大目標を掲げた。
そのためには「地域包括ケアシステム」というものを構築することが必要であり、その一翼を担う薬局においては厚生労働省が「患者のための薬局ビジョン」を掲げている。

これまでの薬局は病院やクリニックに依存する、立地の優位性が非常に高かった。しかし、ビジョンの中では、そのような立地依存の状態から、薬局本来の機能で選ばれる、あくまで患者本位の運営をしている薬局を目指そうと明記してある。

改定から生まれた論点

そのようなビジョンを元に、前回の主な改定では下記三点が論点としてあがった。

1. 患者本位の医薬分業の実現のために、かかりつけ薬剤師・薬局の評価や門前薬局の評価の見直し等、対物業務から対人業務への転換を促すこと
2. 後発医薬品にかかる数量シェア80%目標を達成すること
3. かかりつけ医とかかりつけ薬剤師が連携し、薬剤の適正使用を促すこと

それらを踏まえ、ご存知のとおり後発加算や新施設基準加算、調剤基本料等、要件の厳しくなった改定や、かかりつけ薬剤師指導料等、新設されたルールがあった。
上記を実現することで、多剤・重複投薬の防止や残薬解消などを通じて、医療費の適正化にも貢献することが期待された。

調剤薬局
前回の報酬改定の反省は、今回どう活かされるか


それを受け、各企業は対応に追われた2年間であった。

施設基準をとるために営業時間を増やしたり、在宅の営業部隊を新設し一件でも多く在宅をとろうとしたり、一般名処方については積極的なジェネリックへの変更を行ったり・・・それぞれの薬局ができる限りのことをした。
その詳細な検証結果は今後公開されるであろうが、慢性的に薬剤師が不足する中、営業時間を延ばすことができない薬局、在宅の営業に割くマンパワーが無い薬局が出てきたのはもちろん、「処方元ドクターがジェネリックを好まないため後発加算が取れない」「田舎という立地のため集中率が簡単に下げられない」など薬局の自助努力による加算取得の限界も見えてしまった。
このあたりについては、実態に即したルール改定が次回期待される。

改定から生まれた論点

2015年の経済財政諮問会議で、当時厚生労働大臣であった塩崎氏が「57,000軒の薬局全てを残すわけではない」と発言したように、基本的には国の方針に従わない、またはついてくることができない薬局はどんどん厳しい措置がとられていくであろう。要件によっては減点をするということも十分にありえる。
前回実現こそしなかったが、財務省は「単なる門前薬局については調剤基本料の是正(処方箋2,500回以上かつ集中率50%以上、または1,200回以上かつ70%以上が基本料18点)を求める」「後発比率65%以下を減点する」という要求をあげており、同様の議論は今回も予想される。

前回の改定はあくまで次回の介護とのダブル改定の序章に過ぎず、その準備期間と位置づけされている。社会保障費が増大する中、基本的には業界全体としてプラス改定はかなり難しいのではないだろうか。
次回は改定における財務省・厚労省のそれぞれの主張をまとめたい。

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AUTHOR PROFILE

業界再編部 シニアディールマネージャー
調剤薬局業界責任者

山本 夢人

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。現在は調剤薬局と運送業界の責任者としてM&Aを支援している。石川県出身。