2018年4月、新たな報酬改定がスタートした。
このコラムでも解説したとおり、今回は非常に大きな変化があり、調剤薬局企業各社も将来を見据えてあらゆる変化をとげなければいけなくなった。
今後各社はどのような動きをしていくのであろうか、報酬改定内容に沿って解説をしていきたい。

大手チェーン薬局の今後

大手チェーン薬局は今後更なる薬局の厳選をしていくことだろう。
大手の狙い撃ちと捉えられかねない40万回ルール、かつ集中率85%への基準の引き下げに伴い、譲り受けはより慎重にならざるを得ない。
95%基準であれば、企業努力で集中率を下げることができ、多少集中率の高い店舗であってもM&Aによる譲受を検討できたが、85%を切るとなると努力で改善できる水準ではもはや無い。今後集中率はよりシビアに見られることは間違いないだろう。
とはいえ、各社IRでも標榜しているとおり、拡大の柱になるのはあくまでM&Aである。
検討できる薬局の基準が高まるので実質的に検討できる案件数が減少する一方、“拡大のためよりよい薬局については是が非でも譲り受けしなければ”というのが大手チェーン薬局の本音であろう。
そのため、優良薬局については争奪戦が予想され、今まで以上に高い評価がなされる可能性がある。
そのときに重要視されるのは
・集中率が85%を切っているか
・在宅をできる環境かどうか
・既存店舗といかに連携がとれるか
・店舗の数(いかに多いか)
という4点であろう。

競争になるということは、大手チェーン薬局は譲渡企業に対し差別化できる要素をしっかりアピールしなければならないということでもある。
M&A譲り受けの条件として、「子会社として残す」「看板をそのままにする」などの見直しが図られていくと思われる。

調剤薬局
よりよい薬局を譲り受けするために各社の検討はすでに始まっているかもしれない


大手チェーン薬局からの譲渡も増加!?

一方、大手チェーン薬局からの譲渡も増加するのではないかと考えられる。
次回の改定で集中率の基準が下げられたため、調剤基本料点数が41点から15点になる店舗が続出している。そうなると黒字が一転、赤字という店舗も少なくないはずだ。
もちろん利益額がすべてはないことは確かだが、よりよい医療サービスの提供のための投資源泉はあくまで利益からである。
従業員・患者・ドクターのことを考えて長く運営することを目的とすると、月4万回以下の企業に譲り受けてもらい、調剤基本料1を維持するということも、薬局存続・成長のためのひとつの選択肢ではないだろうか。

以上のように、大手チェーン薬局は譲り受け・譲渡両面で戦略を練り、より“筋肉質”になっていくだろう。
2025年に目指された地域包括ケアシステム構築時の立ち居地がどのようなものになるか、今後の5年が勝負だ。

中小薬局の今後

次に中小薬局に焦点を当ててみたい。
「57,000軒を全て残すわけではない」という言葉が記憶に新しいが、そのターゲットは大手チェーン薬局であったということが今回の改定で明らかになった。
大手10社を集めてもシェアでいえば14%程度にとどまり、残りの86%が今後の改定対象になることは想像に難くない。つまり、今回の改定の影響が少なかった中小薬局は安心していられず、むしろこの期を逃さずに次の展開へシフトする必要がある。

既に動き出した中堅薬局は選択と集中を真剣に検討している。
地域を定め、良い案件に集中して店舗を出店し、自社の顧客基盤を作る。一方で、飛び地にある店舗や、将来人口減がみこまれる地域の店舗は、独立希望の薬剤師に任せたり、事業譲渡で他社に譲ることで、財務基盤も安定させ、次の10年で生き残れる体制を築き上げている。

M&A市場で起こる変化

選択と集中にあたり、M&A市場でも変化がおきている。
M&Aでの出店については、優良案件の情報が今まで以上に手に入るようになる。
というのも、これまでは大手調剤薬局が積極的に買収を行っており、譲渡オーナーは「誰もが知っている大手チェーン薬局に譲りたい」ということで、大手チェーン薬局がバイサイドのメインプレーヤーであった。しかし、2016年の改定以降、4万回以上のグループに入ることで基本料が減額されることもあり、さらには今回40万回以上の企業なども更なる減額を余儀なくされ、大手が検討できる案件が少なくなってきた。そのため、中堅薬局がM&Aバイサイドのメインプレーヤーになりつつあるのだ。
実際、当社の仲介案件でも、2016年はバイサイドにおける大手チェーン薬局の割合はおよそ7割であったが、2017年度はおよそ3割に減り、7割が中堅薬局という逆転現象が起きている。

しかしながら、中堅薬局の中身を見ると、実際に買収を実現している企業は一部に偏っている。
買収を実現している企業は、社内でM&Aの予算をしっかりと策定し、ファイナンスの方法を固め、案件に対して明確な基準を作っている。
意外と思われるかもしれないが、案件の検討において最も大切なのは“決裁のスピード”である。どれだけ慎重に検討したとしても、リスクというものは排除しきれない。また、検討に数か月かけたために、いざ価額提示!という頃に、他社がすでに価額提示し、実際には交渉は終わってしまっているということもある。金額の条件が他社より低くても、スピード感を譲渡オーナーが求めているケースもあるため、スピード感を持ってM&Aに臨むことで投資金額を抑え優良な案件を獲得できる可能性もあるのだ。
それゆえ、事前にM&Aができる体制を整えておくことが中堅企業のM&A戦略成功のポイントなのである。
やみくもに情報を集めて検討をするのではなく、まずは内部の考えを明確にし、今日明日で決断できる体制を構築していくべきであろう。

調剤薬局業界の急速な変化を乗り切るために・・・

調剤薬局業界は今、変化を余儀なくされている。
たびたびの制度改正、IT化の急進、ビッグデータの取り扱い・・・今までは考えられなかったことが今後急速に起こることは目に見えている。
その変化についていけなくなった薬局は今後淘汰されていく。
各社それぞれに合った戦略を練り、変化に対応していく力をつけていかなければならない。「現状維持」「このままでいい」は今後は通用しなくなっていく時代なのだ。

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AUTHOR PROFILE

業界再編部 シニアディールマネージャー
調剤薬局業界責任者

山本 夢人

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。現在は調剤薬局と運送業界の責任者としてM&Aを支援している。石川県出身。