2019年1月26日(土)より、調剤薬局オーナー向けのセミナーが開催された。今回は北から、仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・大分・熊本・鹿児島の9会場となった。
先日リリースされた大分県のNo.1薬局である永冨調剤薬局の譲渡で、現在九州エリアはM&Aへの関心が非常に高まってきている。
その熱気も反映されたセミナーとなった。

セミナー
多くの方で賑わったセミナー会場


M&A後に23店舗から38店舗へと成長した阪神HDグループの鈴木薬局

今回のセミナーでは、近年非常に注目されている”戦略的事業承継”の成功者である、株式会社鈴木薬局(2017年に阪神調剤ホールディングへ100%株式譲渡)の代表取締役会長 鈴木達弥氏を特別講師にお招きし、M&A検討のきっかけから、譲渡後の自身の役割などについて講演いただいた。

鈴木達弥氏は、新婚旅行先のハワイで出会った“コンビニのように気軽に誰でも薬が手に取れるような薬局”に心を動かされ、1986年に株式会社鈴木薬局を設立。その後、業界再編に伴う経営危機をなんとか乗り越え、21店舗の調剤薬局・介護事業、5店舗のフィットネス事業を展開するなど、同社を成長させてきた。
そんな中、2017年に阪神調剤ホールディングに同社をM&Aで譲渡。鈴木達弥氏は現在も代表取締役会長として経営に参画している。

なぜ、当時21店舗32億円の優良企業が、売上高100億円を目指す10年計画の真っ只中、譲渡を決断したのか―

そう感じる方も多くいらっしゃるだろう。
講演の中で、鈴木氏は以下のように話していた。

「後継者候補を育てようと社内で候補者を育成していました。しかし実際に事業承継を考えると、会社の株式は社員が買い取れるような額ではなく、資金調達の面がクリアになりませんでした」

「M&A譲渡を決断したとはいえ、自分もまだ経営に関して未練があったので、M&A後10年間は経営者として継続できるお相手を選ばせてもらいました。候補先はいくつかあがりましたが、そういった自分の希望を叶えてくれ、経営理念が近いお相手が阪神調剤HDでした」

「M&Aをしてから、仕入れ交渉や資金繰り、薬剤師の確保がとても楽になりました。特に薬剤師の確保に関しては雲泥の差ですね。いつもは苦戦する採用ですが、昨年は15名も採用できました」

特に、鈴木氏はこう強く繰り返し述べていた。

「『何のためにM&Aをするのか?』―これを常に自問自答していました」

鈴木氏は「会社を成長させるためにはM&Aが必要」という結論にたどり着き、M&Aを決断したのだと語っていた。

鈴木氏にとってのM&Aは引退ではない。
今も経営を担い、M&Aを経て店舗数を増やしているなど精力的に活動している。

「10年計画は売上高100億円。M&Aをしたことで、そのゴールが今、見えました」と笑顔で応えた鈴木氏が印象的だった。

理念を共にする仲間と戦略的に手を組むことで更なる成長を実現

前回のコラムでも触れた永冨調剤薬局と、今回の鈴木薬局。
この2社に、共通点は数多く存在している。

第一に、“オーナーが持つ地域医療への想い”だ。
両社とも地域を代表するような優良企業であり単独でも生き残れる薬局であったが、“より地域医療に貢献する”ためにM&A譲渡の道を選んだ。
というのも、調剤報酬改定が進み、今後さらなる業界再編が起きるかもしれない現実がそこには存在している。
そのような未来に進んでいくにあたり、単独で経営するよりも大手のグループに入ることこそ、安定して地域に医療を届けられる方法であるとM&Aを決断した両社―譲渡対価については、良い条件でのオファーが多くある中で、会社や従業員の未来を考え、対価ありきではなく理念・文化の合う相手と組むことを選ばれた。

当社のセミナーには、譲受けによって店舗を拡大させ、自社を成長させたいという経営者の方もご参加いただいている。成長が自社の課題であった場合、今一度考えてみてほしい。
譲受けることだけが成長の道ではない。“成長のための譲渡”という選択肢を、このセミナーでは強く体感いただけたのではないだろうか。

さらに活性化する薬局業界のM&A 最高のお相手と巡り会うためには?

セミナーの第2部では、弊社調剤薬局業界責任者の山本・小林より、『2018年の調剤薬局業界M&A』について解説を行った。
2018年のトピックとしては以下の3つだ。

1. 大手調剤の動きは譲受対象外の薬局像が明確に
2. 譲渡件数は昨年同期間ベースの1.5倍
3. 市場の成熟化に伴い、ブローカー的仲介企業やファンドが台頭

これらの流れは、今後更に強まるだろう。

2012年頃から始まった調剤薬局業界のM&Aブーム。ピークを迎えM&A件数が増加すればトラブルも増えてくる。
理念を共有できる最高の相手と巡り会うことで、M&Aによる成長は生まれる。しかし、そのお相手の姿がきちんと正確に見えなければ、「こんなはずじゃなかった」というトラブルにつながってしまう。

当社では、最高のお相手と巡り会うM&Aを提供するために、譲受け企業に関する分析サービスも開始した。
過去の成約事例に基づいた細やかな譲受け企業分析により、譲渡希望オーナーはより自社に合ったお相手とM&A交渉のステージに進むことができる。

どうかM&Aを上手に活用して、薬局業界再編の波を乗り越えていただきたい。

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永田 雄嗣

プロフィール
1989年、愛知県生まれ。横浜国立大学工学部卒。入社以来、調剤薬局業界を専門にM&Aによる成長戦略、事業承継支援に取り組む。群馬県・千葉県・山口県・福岡県・大分県・宮崎県・佐賀県・熊本県・鹿児島県・長崎県・沖縄県の調剤薬局を担当している。